キャサリン・ニーバさんにとって初めての妊娠は何が起こるか見当もつかず、大変なことでした。
「本当に怖かったです。診療所では看護師と1対1で話す時間がなく、不安を打ち明けたり、質問ができませんでした」と言います。
最終的には健康な女児を出産しましたが、妊娠や出産時に経験した不安がなくなるまでには、かなりの時間がかかりました。
キャサリンさんの娘のステーシーさんは10歳。気配りのできる、好奇心旺盛な少女です。現在、キャサリンさんは第2子を妊娠中です。
今回はビヒガ郡の紹介受診病院でケアを受けることにしました。妊婦と新生児に対するケアとエイズ、結核、マラリア関連サービスの統合について、医療従事者に研修を行っているケニアの保健施設61ヵ所のうちのひとつです。
研修は、武田薬品工業株式会社のグローバルCSRプログラムの資金支援を受け、現地の保健当局とグローバルファンド、そしてリバプール熱帯医学校のパートナーシップにより提供されています。
ケニアでは毎年、数百万もの人々がエイズ、結核、マラリアの影響を受けています。世界保健機関によると、2022年のケニアにおけるマラリア患者数は推定500万人で、それには妊婦や5歳未満の子どもも多く含まれています。また、結核は感染症や妊婦・新生児の疾病の死因の第4位を占め、エイズの疾病負担が最も重い国の一つです。
妊娠は多くの女性やその家族が医療を求める数少ない確実な機会であり、疾病の検査や治療、予防にとっても重要な機会です。
ビヒガ郡紹介受診病院の看護師兼管理者であるアミナ・バラカさんは「病院の受診者の大半が最初に会う医療従事者が看護師や助産師です」と言います。
アミナさんたちは健康診断や定期的な妊婦健診だけでなく、妊婦、そして多くの場合は付き添いの家族にもHIV検査を行っています。検査結果が陽性の場合は、母子感染を防ぐために抗レトロウイルス薬を提供します。
また、妊婦には結核とマラリアのスクリーニングを行い、予防のためのアドバイスや手段を提供します。これらの疾病は妊婦や新生児には特に危険であるためです。さらに、詳細な病歴を調べ、パートナーからの暴力を含む、病気や危害などのリスク要因を特定します。
研修によって、患者と医療従事者との間に信頼と自信が生まれてきています。
「今回はまったく違います」とキャサリンさんは語ります。「看護師さんたちはとても話しやすく、頼りがいがあります。どんな問題でも、どんなことでも、すべて話せます。」
看護師のエバリン・オムソンガさんが7年前に産科病棟で働き始めた頃は、人手が足りないことがよくありました。「10~12人の出産を一人で抱え、孤独でした」と言います。
しかし今では、総合ケアの一環として、エバリンさんは、経験の浅い看護師と働く中で、アドバイスをしたり、才能を伸ばしたり、キャサリンさんのような妊婦とどのように関係を築き、サポートするかを伝授しています。
現在エバリンさんは14人の産科病棟の看護師を管理しています。その全員が同プログラムで研修を受けています。
エバリンさんはまた、定期的に行われるマタニティセミナーの進行役も務めています。そこでのグループディスカッションでは、医療従事者と10~12人の妊婦が参加し、適切な食事や就寝時の蚊帳の使用、十分な休養の重要性など、産前産後や分娩中に何が起こり、何をすべきかを話し合います。
女性同士で、出産や母親になることに対する不安や期待、経験などを分かち合うようにも勧めています。
「自分は一人じゃないと分かると本当に気が楽になります。頑張り続けようという勇気が湧いて、解き放されたように感じます」とキャサリンさんは言います。
リバプール熱帯医学校が運営するこの統合ケアプログラムはわずか3年の間にケニア、タンザニア、ナイジェリアで1200人を超える医療従事者の研修を行い、130万人以上の妊婦や家族を支援してきました。
プログラムが開始された2021年以降、ビヒガ郡だけでもエバリンさんたちによってHIV検査率は3割以上、マラリアと結核のスクリーニングもそれぞれ164%と117%以上増加しました。
エイズ、結核、マラリア関連サービスの産前産後ケアへの統合は、より多くの人々(多くの場合、最も感染症のリスクが高い人々)に命を救うケアを届けるための効果的かつ費用対効果の高い方法です。
それはまた、妊婦個々人の身体面、感情面、精神面のニーズを支える医療スタッフやコミュニティを育てることにも繋がります。
「妊婦さんを一個人として扱い、歓迎し、座ってもらい、名前で呼びかけ、プライバシーを尊重します」とアミナさんは語ります。「この研修は、医療従事者にも、女性にも、一般市民にも、大きな恩恵をもたらしています。」
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